伊勢神宮正式参拝

ご縁があって、伊勢神宮に正式参拝してまいりました。
何年か前のことですが、読んでいた本に
「実は、伊勢神宮には、あの御垣内に入ってお詣りが出来る特別なチケットはある。私達は、先日そのチケットを手に入れて伊勢神宮にお詣りしてきました」
 という言葉から始まるエッセイはありまして。
「では、どうやってそれを手に入れたかというと、伊勢神宮にお詣りした時
『式年遷宮の為に寄附させていただきたいのですが』
 と、申し出たのである。そう、これはプラチナチケットとして購入したのではない。あくまでも寄附のお礼として『お納めください』といただけるゆかしいものなのである。
そして御垣内で詣でる時は当然正装である。私達は気合を入れて伊勢神宮へ向かった」
 という話で、それを読んだ時は
「なるほど、普通の神社だってお祭りの為に寄附すると手ぬぐいをくれたりするものな。それが伊勢神宮だと、特別に一般には入れない御垣内への参拝を許してくれるわけか。豪気だな。
貴重な機会だけど、伊勢神宮で、正装で、御垣内参拝となると、うっかりやらかしをしたら大変そう」 
 と思ったのですが、自分にその機会は訪れることがあるとは思いませんでした。
 古事記講座の頃から宗匠が
「行きたい人がいたら伊勢神宮に正式参拝する時に一緒に連れて行ってあげるよ」
 と、言ってくださっていたのですが、宗匠の講座の事務局もしてくださっているクラブワールドさんの連絡網から
「藤原道長の直系子孫である二條宗匠のご案内より伊勢神宮外宮内宮を正式に参拝し、御神楽を奉納いたします。
こちらはクラブワールドではなく、宗匠のお弟子さんが事務局をされていますが、クラブワールドにご連絡いただければ事務局に橋渡しをします」
 というご連絡が回ってまいりまして。
 ええ、即座に申し込みましたよ。こんな機会二度とないかもしれないじゃないですか。心配な御垣内参拝のお作法も、お手本が目の前にいらっしゃるのですもの。
「これで大丈夫ですよね⁈神主さんに怒られませんよね⁉」
 という心配なく参拝できる。なにせお作法の達人である宗匠が
「伊勢神宮の神主さんは厳しいんですよ。あそこの人達にとって一番大事なのは、まず神様。自分達は天照大御神様にお仕えしている、という自負がある。大御神様に対して不作法なことをする人は見逃しません」
 と、おっしゃるくらいですからね。
「大御神様に対して、なんて不作法な!」
 と怒られないよう
「まあ、これぐらいなら見逃してあげましょう」
 と思ってもらえる程度の失敗ですませたいじゃないですか。今回は、確実に「迷ったら真似をする」で乗り切ることが出来る。
 同じように思った人が大勢いたのか、正式参拝の申し込み枠はあっという間に一杯。
 申し込み後、服装についての注意事項も「男性・女性」「和装・洋装」についてそれぞれ詳細に書いていただいたものをクラブワールドさん経由で送っていただけました。
 伊勢神宮に着物で正式参拝する、なんていう勇気はないので当然選択は洋装。
「洋服なら、喪服の装いで大丈夫。靴とバッグは布。革は駄目だよ」
 との宗匠のお言葉を受けて、ブラックフォーマルの注意事項をチェックし、外しがないかを確認。
「伊勢神宮は玉砂利の上を歩かないといけないから御垣内に入るまでは歩きやすい靴で大丈夫。御垣内に入る時に履き替えられるから」
 とのことでしたので家からは、伊勢神宮に入っても大丈夫そうなシンプルなスニーカーを選択。
 パンプスも「高さは、こちらの方が好みだけど、歩きやすさをまず重視。こちらのパンプスなら玉砂利の上でも大丈夫な筈」
こういう時は、なんだかんだいっても安心の日本製。日本の靴職人さんの作った靴は履き心地が柔らかで履きやすいですよね。
当日は、現地集合だったですが集合時間が始発でも間に合わない。前日入りするしかないかなと宿を探したのですが、一緒に行く友達が事務局をしてくださっている方に、集合時間について尋ねてくれました。
「それくらいの遅れなら大丈夫ですよ」
 と、承諾をいただだいたので一安心。始発の新幹線に乗り込んで、友達と合流。集合場所は宇治山田の駅だったので、すぐ分かるか心配したのですが、華やかな一段は集っていたので心配は無用でした。
やっぱり着物の正装って目立つのですよね。そのうえ、宗匠の直弟子、仮名教室の生徒さん、クラブワールドの関係者。ああ、これはあっという間に募集枠が満杯になるわ、と納得してしまう大集団。
これだけの人数の為に色々と手配してくださったのだな、事務局をしてくださった甲田さんをはじめとする宗匠のお弟子さん達に思わず感謝してしまいました。
いつもは和装の宗匠も、この日は洋装の礼装。藤原北家の末裔となると庶民のように紋付き袴で、というわけにはいきませんものね。
この集団を公家の正式礼装で先導されるとしたら確実に「何事?」と注目されるでしょうし、その状態で後をついていくなんて想像するのも恐ろしい。
なにせ私達は
「あなた達は、いつもと変わらないね」
 と宗匠に言われるくらい、キャッキャ、ウフフしてましたからね。これって、あれだな、今の私達は冬のロシアの観光客というやつだな。
 伊勢神宮への正式参拝の重みというものを、本当のところよく理解していないから、緊張よりも滅多に出来ない体験への浮き浮きの方が勝っているのだろうな、と思いました。
 冬のロシアの観光客というのは昔読んだエッセイに記されたエピソードで。
冬のロシアを観光旅行中、凍った池の上でスケートをしている人達を見物していた時、同じツアーに参加していた人が足を滑らせて氷の隙間から池に落ちた。
それを見て慌てたのは、池で遊んでいたロシア人達の方で。一斉に駆け寄って落ちた人を池から引っ張りあげると、矢のような速さでどこかへ連れていった。
その様子を唖然として見ていた日本人達が
「とりあえず、あの人達の後を追いかけましょう」
 とロシア人達が向かった方向に辿り着くと、池に落ちた人は着ていた服を身ぐるみ剝がされて、ストーブの前で毛布にくるまり、濡れた服が乾くのを待っている状態だった。
「良かった!本当に無事で良かった!」
 と真剣な顔で喜ぶロシア人ガイドとは対照的に、冬のロシアで池に落ちるとはどういうことなのかを理解していない日本人達は
「ロシア人は親切だね」「びっくりしたけど、何ごともなくで良かったね」
と、のんきに喜んでいたという話で。
冬のロシアの怖さを知っているロシア人達は、「冬、池に落ちる=濡れた身体をすぐ温めないと低体温症で死ぬ」一刻を争う事態だと知っているから慌てて、日本人達は、「引き上げなきゃ」とは思っても、それが死と結びつくようなことだとは咄嗟には思い浮かばなかったのですよね。
どれだけ凄いことでも自分の理解の範囲内でしか感情がついていかないのでしょうね。
どういうことなのか説明されて、理解して、はじめて感情がついてくるのかな?だから周りから「着物に、紋付き袴だ。何かあるのかな?」と思われる程度の緊張で、ちょうど良かったのでしょうね。
本当に正式参拝の重みを理解したら、かえって緊張し過ぎて粗相をしそうですし。
正式参拝の重みをよく理解している人達ならともかく、この程度の理解しかしていない人達を率いていかないといけないのだから宗匠も大変です。
ですので、参拝の前にきちんとレクチャーがございました。
「今日は観光ではなく参拝ですから鳥居をくぐる時も、きちんと礼をしてから入りましょう。
 鳥居の真ん中は神様のお通りになられるところですから、真ん中を避け鳥居の右側か、左側から入る。入る時は神様に対する礼として、神様から遠い方の足から入ります」
 鳥居の右側から入る人にとって、神様の通る真ん中から近いのは左側だから右足から入る。
 鳥居の左側から入る人にとって、神様の通る真ん中から近いのは右側だから左足から入る。
 当たり前の所作として身についている方々にとっては言わずもがなことなのでしょうが、私達は意識しないとできませんからね。
 神社の中のお社についても宗匠が
「ここでは毎日、火をおこし天照大御神様の為のお食事が作られます。いわば神様の台所です」
 と、説明してくださった時に
「高野山のお坊さんも毎日空海様の為に奥の院へお料理を運ぶけど、メニューにパスタもあるって聞いたなあ。精進パスタ、精進洋食なのだろうけど伊勢神宮だとどうなのかしら?
日本の神様、新しもの好きだから正統派和食以外も面白がったりしないのかしら?」
 と、つい考えてしまいました。伊勢神宮外宮の神様は豊受大御神。内宮の天照大御神の為に食事をご用意する食物神ですものね。 

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